学校デビューしたあとの話し

学校で恥をかいた日の帰り道
学校で恥をかいた私を、ローレンスが迎えに来てくれた。
そして「晩餐を用意するわ」と言ってくれた。
出会ってからというもの、夕食に招待してくれたり、観光に連れて行ってくれたり、学校にも付き添ってくれたりと、本当にたくさんの時間を一緒に過ごした。
この日は、フランス滞在の“最後の晩餐”になった。
子どもたちとの散歩と黄色い花
ローレンスがご飯を作るあいだ、子どもたちと家の周りを散歩することにした。
家の裏が大自然で、思わず息をのんだ。

散歩の途中、妹のセレスティヌが黄色い花を持ってきて、私の顎の下にかざした。

「黄色く光るとバターが好きなんだよ」と教えてくれた。
なんともフランスらしい発想だ。
実際、セレスティヌの顎の下はちゃんと黄色く光っていた。

そこに母のローレンスが登場し、花をつかんで一言。
「この花じゃない!」
セレスティヌが苦笑いしていて、なんだか微笑ましかった。
クレープの日に知ったフランスの習慣
散歩から戻ると、みんなでクレープを食べた。
2月2日はフランスでは“クレープの日”で、家族みんなでクレープを食べる習慣があるという。
由来はキリスト教から来ているらしい。

家で遊んでいるうちに、旦那さんが帰ってきて、いよいよ最後の晩餐がはじまった。
とんでもなく豪華な伝統料理が並び、写真を撮らなかったのが悔やまれるほどだった。
最後の晩餐と、思いがけない言葉
食事を終え、子どもたちが床についたころ、思いがけない時間が待っていた。
ローレンスと旦那さんと3人で、静かな夜を過ごしたのだ。
そのとき旦那さんが言った。
「りのこのおかげで、僕たちは娘の成長に感動したよ。
あなたが来てくれたおかげで、娘は自分で考えて行動し、あなたを学校に連れて行った。
まさかそんなことができるなんて思わなかった。本当にありがとう。」
私は頭の中が「???」でいっぱいになった。
え? 私がしていることって、相手に迷惑をかけたり、お世話になってばかりじゃないの?
相手にも何かを与えることができるの?
そんなこと、考えたこともなかった。
「ただ存在するだけで与える」ことに気づいた夜
世界一周のときも、私はいつも人に助けられて、与えてもらうだけの人間だと思っていた。
でも、ただやりたいことをやるだけで、誰かが「楽しかった」「うれしかった」と感じてくれることがあるなんて。
そんな幸せなことはない。
「ただ存在するだけで、誰かの役に立っている」
そう思えた夜だった。
とにかく、うれしかった。


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